
見過ごしがちな日常の出来事も、よくよく見ると面白い!
トランストラクチャのコンサルタントが感じたこと興味を持ったことを記していきます。
統制
はっきりとしない天気が続くが、時季は観光シーズンの真只中、出張途上の空港で多くの修学旅行生の団体と出会う。
学校によって制服がさまざまであるように、生徒たちの態度もさまざま。行儀の良い生徒が多い学校もあれば、やんちゃな生徒ばかりが目立つ学校もある。
先週、羽田空港にいた修学旅行生の団体は、実によく統制がとれていた。一糸乱れず整列し、私語することもなく搭乗の順番を待っている。よく見ると、引率の先生は小さな女性の先生。「今日の旅程」を説明する声はとてもか細いものだったが、皆静かに耳を傾けていた。いざ搭乗の段となると、生徒たちは一斉に立ち上がり、お互いに、「静かにね」「さわいじゃだめだよ」と小さな声をかけあっている。気を緩めたら大声ではしゃいでしまいそうなのを、一生懸命自制し、周りに迷惑をかけないようにしているのだ。普段からの躾なのか、旅行に際しての厳命なのかわからぬが、怖い先生が目を光らせていなくても、自らを統制しているのだった。
他方、昨日出会った生徒の団体は、立派な体格の男の先生が声をはりあげているのに、一向にまとまらない、お世辞にも行儀が良いとはいえない団体。列は乱すし、勝手にトイレにいくし、走り回るし、旅行会社の担当者の説明はまったく聞いていない。あちらでふたり、こちらで三人、大声を出してじゃれあっている。搭乗を待つ早朝の10分間、静かに目をつぶっていたいと思うが、うるさくてそれどころではない。搭乗のとき、それでも、客室乗務員の挨拶に、ひとりひとりが大きな声で、「おはようございます!」と応じていた。なぜだかほっとした。
チームワーク
照明写真を撮る用件があって近所の写真スタジオに行くと、そのスタジオの売り物である「七五三写真」の撮影の真っ最中だった。
被写体は3歳の子供、若いお母さんが落ち着かない様子で傍らに座り、カメラマンとふたりのアシスタントが機敏に動いている。アシスタントは背景と小道具をセッティングし、被写体の子供を所定のポジションに座らせ、身体の向きを決め、手足の位置などを教える。これが決まった瞬間、アシスタントはさっと身を引き、カメラマンはほとんど同時にシャッターを押す。
さらに撮影は続く。カメラマンは子供が良い表情を出すよう、話しかけ、アシスタントはシャッターの瞬間を予測して背後からおもちゃを使って笑わせる。少し姿勢や衣装がくずれると、ファインダーを覗いているカメラマンがそれを指摘するのだが、それを予測したかのようにアシスタントは素早く衣装を直す。
少しの無駄もない3人の動きはどうして作られるのか不思議だった。カメラマンがこのスタジオのリーダーなのかと思いきや、聞いてみるとこの人が一番年下のアルバイトだというではないか。このスタジオでは、誰が撮影し、誰がアシスタント役をするか、撮影案件ごとに決めるのだそうだ。実際にファインダーを覗いてベストチャンスにシャッターを押す苦労を経験するからこそ、アシスタント役のときにカメラマンの描くイメージを予測し素早い動きができるというわけだ。
小さな写真スタジオのたった3人のチームではあるが、目を見張るチームワークの背景には、スタッフを早く育てようとする独自の工夫が生きていた。
剣道少年
近所に剣道の道場がある。日曜日の午前9時から11時までは小学生を中心とする子供の部、11時以降はおとなの部になっている。日曜日の朝、道場の脇の道を歩くと、「メーン、メーン」と、50人ほどの子供たちの元気な気合が聞こえてくる。
稽古の終わりに、先生の「着座!」という号令がかかると、全員整列して床に正座し、「黙想!」という号令で静かに目を閉じ、精神統一する決まりになっている。ところが2年生や3年生の子供は、稽古しているのだか遊んでいるのだか区別がつかないようなやんちゃ坊主たちだ。先生がひとこと号令したくらいでは収まらない。やっと着座しても、胴の紐がほどけていたり、面がだらしなくころがっていたりすることがある。
そんなとき、先生が何も言わないのに、何人かの5、6年生が立ち上がり、小走りに彼らの傍らに寄る。やんちゃ坊主たちに後ろから何か小声で話しかけ、胴の紐を結んでやったり、面の置き方を教えて直させたりして、速やかにまた、自分の位置に戻って着座するのだ。教えられたほうも、この時はなぜか神妙に先輩の言うことを聞く。
少し年上の先輩が、少し年下の後輩に教える。とても自然な、流れるような行為である。職場でもこのような「教え」の場面が豊富にあればいいのだろうな、と考える。親ほど年の離れた上司が、「俺の背中見て育て」などと言っても若い社員はよく理解しない。年の近い先輩から後輩に、丁寧に仕事の技術を継承していくような組織が作れたら、きっと底力のある会社を作ることができることだろう。
